生化学講座 【楠元研究棟3階】
研究
 
 
研究テーマと実績

 発光酵素(ルシフェラーゼ)を用いた解析技術の有用性を活かした研究を中心としており、特に、独自に開発した「タンパク質分泌を可視化する生物発光イメージング法」の応用範囲を広げながら研究を進めている。
研究を進める上では、「生物発光(バイオルミネッセンス)を利用した新しい手法を開発・応用することで、医歯薬学における先駆的な発見と医療応用を行うこと」を方針および目標としている。

現在、主に以下の研究内容に取り組んでいる。

  1. タンパク質・ペプチドホルモン分泌の分子機構
  2. タンパク質分泌動態を可視化する生物発光イメージング法の開発と応用
  3. 血糖値調節・骨形成・癌・唾液腺・神経伝達におけるタンパク質分泌
  4. インスリン分泌機構の解明と医療研究への応用
  5. 細胞間接着・三次元細胞培養による同調性タンパク質分泌の分子機構
  6. 細胞膜受容体・膜タンパク質の開口分泌動態と細胞表面における局在
  7. 歯科材料の細胞毒性試験に応用する生物発光分析法
タンパク質分泌動態を可視化する生物発光イメージング法の開発と応用

 成長因子、ホルモン、サイトカインなどの細胞間情報伝達物質や、細胞外マトリックス成分とその調節に関与する酵素など、細胞は様々なタンパク質を開口分泌(エキソサイトーシス)により細胞外へ分泌している。受容体や細胞接着分子など細胞表面で機能するタンパク質も、開口分泌で輸送される。当講座では、開口分泌におけるタンパク質動態を可視化する生物発光イメージング法を開発し、分子機構の解明と手法の医歯薬学分野への応用を目指している。

 生物発光は、ルシフェラーゼ(酵素)がルシフェリン(発光基質)を触媒する酵素反応による発光現象である。我々の研究グループは独自の技術として、生細胞における「分泌タンパク質のビデオレート生物発光イメージング法」を開発してきた。本手法は、分泌型ルシフェラーゼがルシフェリンを含む培養液に分泌された瞬間に起こる微弱発光を、外部光を遮断した高感度カメラ顕微鏡システムで可視化する。分泌経路で高い比発光活性を示すガウシアルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase, GLase)をレポーターとして、水冷EM-CCDカメラで発光シグナルを検出することにより、生細胞においてGLase融合タンパク質の開口分泌動態を1時間以上連続的にビデオレート(30-500 ms/frame)でイメージングできる。本手法は、画像上の発光強度からタンパク質分泌量変化の相対定量が可能であり、単一生細胞の全表面において開口分泌を解析できる上に、細胞塊(スフェロイド、三次元培養細胞)全体のタンパク質分泌を可視化できる利点がある。

 本手法により、これまでに、単一のインスリン分泌細胞からの周期的なインスリン分泌を30分以上連続的にリアルタイムに可視化し、定量解析できることを示した (Suzuki et al, Anal. Biochem. 415: 182-189, 2011)。また、単離ラット膵島およびラット膵β細胞株(INS-1E細胞)から新規に樹立したInsulin-GLase定常発現株(iGL細胞)を用いて、グルコース細胞塊(スフェロイド、3D培養細胞)で同調する周期性インスリン分泌を可視化した (Suzuki et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 486: 886-892, 2017)。iGL細胞は、ルミノメーターを用いた発光測定により簡便にインスリン分泌量の解析が可能であり、周期性インスリン分泌は、グルコース応答性と分泌量の増大に重要であることが示唆された。
2型糖尿病は、歯周病と増悪関係にあり、インスリン抵抗性とインスリン分泌障害が2型糖尿病の原因となるが、特にインスリン分泌障害の発症機序は未だ不明な点が多い。糖尿病で破綻する周期性インスリン分泌は、インスリンの作用を持続させる上で重要と考えられる。細胞塊全体で同調した周期性インスリン分泌能を有するという特長を持つiGL細胞は、インスリン分泌機構の解析と糖尿病薬の開発と評価に有用と考えられる。

 また、がんの浸潤・転移に関わる細胞外基質分解酵素MMP-2について解析を行い、遊走がん細胞における先導端からの活発なMMP-2の極性分泌を可視化した (Suzuki et al, PLoS ONE, 6(9): e25243, 2011 )。このとき、開口分泌後に細胞表面に結合しているタンパク質と、拡散動態を示す開口分泌中のタンパク質を同時に可視化して区別できることも示した。 この他に、タンパク質分泌の生物発光イメージング法の利点を生かした学内外の共同研究を継続的に行っており、脱分極刺激によるグルカゴン分泌(Yokawa et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 485: 725-730, 2017)、IgE抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒(Yokawa et al, Front. Cell Dev. Biol., 10;6:74, 2018)、トロンビン受容体(PAR-1)の活性化(Kanki et al, Cell Death Dis, 10 (2):100, 2019)についての可視化と相対定量解析を報告し、骨・脳神経・唾液腺に関連したタンパク質分泌解析にも取り組んでいる。

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図1. タンパク質分泌の生物発光イメージング法:その原理と利点

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図2. タンパク質分泌のビデオレート生物発光イメージング:
Video-rate bioluminescence imaging for protein secretion

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図3. iGL細胞におけるインスリン分泌の生物発光イメージング解析(Suzuki et al, BBRC 2017より引用)

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