生理学講座 研究

  • 1. 咬合・咀嚼障害が高次脳機能低下を引き起こす神経機構の解明

    歯牙の喪失や咀嚼機能障害が学習・記憶機能を障害し、認知症のリスク因子であることが示唆されています。しかし、どのような神経機構によりこうした障害が起こるのか、また、咬合咀嚼機能を担う三叉神経系と認知記憶脳機能系を繋ぐ神経機構が依然として不明です。本研究では、電気生理学的手法や分子生物学的手法を用いて、咬合・咀嚼障害が高次脳機能低下を引き起こす神経機構を明らかにする研究に取り組んでいます。

     

    2. 大脳皮質における情報処理機構の解明

    大脳皮質では、視覚、聴覚や体性感覚などの感覚情報が処理され、学習・記憶・認知などの高次な情報処理が行われています。しかし、大脳皮質がどのような神経回路で構成され、どのような局所神経回路により情報処理が行われているかについては、依然として不明な点が多く残されています。本研究では、電気生理学的手法や膜電位光学計測法を用いて、大脳皮質における情報処理機構を明らかにする研究に取り組んでいます。

     

    3. 味覚情報を伝える神経細胞の組織上の位置と機能の解明

    食事を美味しく味わうことは、身体を健康に保つだけでなく生きる活力を生みます。視覚、聴覚など多くの感覚系で、情報は末梢で区別され別々に中枢へ運ばれます。味覚を伝える一次中継核である延髄孤束核では、美味しい味と嫌な味に反応する神経細胞が分かれて存在する味覚地図があり、栄養素と毒物を区別することに有利に働いているようです。二次中継核である橋傍腕核においても、味覚地図の可能性を探る取り組みをしています。

     

    4. 咀嚼や嚥下が視床下部から受ける影響の解明

    空腹なヒトや動物が、いつもより早いリズムで咀嚼し、食塊形成の途中で無理やり嚥下してしまう。ドラマやアニメでよく見る描写であり、誰もが知っている現象ですが、脳内のどこで行われているのか、実はまだよくわかっていません。空腹感を司る視床下部は、咀嚼のリズムや嚥下反射を調節している脳幹に、どんな経路で、どのような様式で影響を与えるのか、覚醒下のラットで、解剖学的・生理学的な手法を組み合わせて取り組みます。

     

    5. 咀嚼運動時の開口反射変調メカニズムの解明

    咀嚼運動は、食物を効率よく摂取・消化するのに不可欠な、リズミカルな運動です。咀嚼は単なる顎の開閉口運動ではなく、中枢および末梢の神経機構が連携して、食物の性状に応じて精密に制御されています。しかしながら、それらの情報処理がどこでどのように行われているかについては不明な点が多く、詳細な検討はなされていません。本研究では、ウサギを用いて咀嚼運動中の咀嚼筋筋電図活動や顎運動を記録し、異なる条件下で誘発する開口反射の変調を解析することで、咀嚼運動時の神経制御メカニズムを明らかにする研究に取り組んでいます。